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尾崎財団が選んだ「今年の本」。いずれも財団書庫(咢堂文庫)でお読み頂けます。

咢堂ブックオブザイヤー2017

2014年より、尾崎財団の講師陣や憲政・地方自治に関わりの深い書籍をピックアップする「ブックオブザイヤー」を制定し、今年で4回目になります。本年は以下の作品に賞を贈る運びとなりました。選考には以下の3つの基準を設けています。
 1.2017年の著作であること
 2.政治全般(国政および地方自治、外交・安全保障など)において、すぐれた著作であること
 3.その他、上記の該当に関わらず、授賞にふさわしいと判断されたもの
2017年の選考および授賞理由についてはこちらをクリックください。

LinkIconPRESS RELEASE「咢堂ブックオザイヤー2017の発表について」

大賞(部門別/順不同)

総合
国家の矛盾(高村正彦、三浦瑠麗)
軍事・安全保障
日米同盟のリアリズム(小川和久)
主権なき平和国家(伊勢﨑賢治、布施祐仁)
国政
永田町アホばか列伝(足立康史)
選挙
黙殺(畠山理仁)
地方自治
地方自治講義(今井照)
富山市議はなぜ14人も辞めたのか(チューリップテレビ取材班)
メディア論
オプエド(上杉隆+NOBORDER取材班)

国家の矛盾

国家の矛盾

著者:高村正彦、三浦瑠麗
発行:2017年2月17日
出版社:新潮社
【出版社サイトより】自民党政権はなぜ集団的自衛権の行使容認に踏み切ったのか。日本外交は本当に「対米追従」なのか。外交・安保論議を一貫してリードしてきた自民党の重鎮が舞台裏を明かす。日米同盟と憲法9条に引き裂かれた戦後日本の安全保障論議に「不健全なもの」を感知する国際政治学者が、平和安全法制の「騒動」に見たものとは──。外交・安保の「現場」と「理論」が正面からぶつかり合った異色の対談。

日米同盟のリアリズム

著者:小川和久
発行:2017年7月20日
出版社:文藝春秋
【出版社サイトより】中国・北朝鮮は怯えている。
日本人だけが知らない 世界最強の「戦争力」の真実!
北朝鮮は核開発と弾道ミサイルの開発を続け、日本を標的にすると公言してはばからない。中国は海洋進出への野望をむき出しにし、東シナ海と尖閣諸島周辺での示威活動がニュースにならない日はないほどだ。そんな中、アメリカのトランプ大統領は在日米軍の撤退をチラつかせている。はたして私たち日本人は安全でいられるのか?

主権なき平和国家

主権なき平和国家

著者:伊勢﨑賢治、布施祐仁
発行:2017年10月26日
出版社:集英社クリエイティブ
【出版社サイトより】オスプレイ墜落や米兵婦女暴行事件に対して日本はなぜ何もできないのか。
元国連PKO幹部の紛争解決人・伊勢崎賢治と、南スーダンPKO日報問題の仕掛け人・布施祐仁が、戦後から現在まで「占領状態」が続く主権なき「日本」の核心を突く!

永田町アホばか列伝

永田町アホばか列伝

著者:足立康史
発行:2017年10月26日
出版社:悟空出版
【出版社サイトより】国会での痛快質疑がネットで超人気の現職代議士が、言葉の限りを尽くして「永田町に巣食うアホばか」たちを徹底的に叩きのめす。

人生100年時代の国家戦略

人生100年時代の国家戦略

著者:藤沢烈
発行:2017年12月8日
出版社:東洋経済新報社
【出版社サイトより】「若者が老人を支える国」から「みんなで若者を支える国」へ。小泉進次郎がこども保険を提言した理由とは。日本の未来を問う必読書。

黙殺

黙殺

著者:畠山理仁
発行:2017年11月24日
出版社:集英社
【出版社サイトより】泡沫候補(=無頼系独立候補)たちの孤高の選挙活動を、追っかけ取材20年。
第15回開高健ノンフィクション賞受賞作。

64万人の魂 兵庫知事選記

64万人の魂 兵庫県知事選記

著者:勝谷誠彦
発行:2017年8月9日
出版社:西日本出版社
【出版社サイトより】痛快無比、日本でも有数の低投票率の兵庫県知事選挙に挑んだ候補者勝谷誠彦本人が綴った渾身のルポ。
全41市町を回って見えてきたものは、この国の民主主義の姿は。

地方自治講義

地方自治講義

著者:今井照
発行:2017年2月6日
出版社:筑摩書房
【出版社サイトより】地方自治の原理と歴史、人口減少やコミュニティ、憲法問題など現在の課題をわかりやすく解説。市民が自治体を使いこなすための、従来にない地方自治入門講義。

冨山市議会はなぜ14人も辞めたのか

冨山市議会はなぜ14人も辞めたのか

著者:チューリップテレビ取材班
発行:2017年5月25日
出版社:岩波書店
【出版社サイトより】富山市議会で,数の力をバックに自らの議員報酬を増額するお手盛り条例案が可決された.それに疑問を感じた地方局の記者たちが,さまざまな圧力と闘いながら膨大な資料を分析,政務活動費の不正を暴き,ついに議員たちをドミノ辞職へと追い込んでいく.全国に波及した白紙領収証問題の大スクープはいかにして生まれたのか.迫真のルポ.

マル激トーク・オン・ディマンド

反グローバリゼーションとポピュリズム 「トランプ化」する世界

著者:宮台真司、神保哲生
発行:2017年5月20日
出版社:光文社
【出版社サイトより】6人の論客と追う、騒乱のアメリカと分断される世界。
渡辺靖 (慶應義塾大学SFC教授)
佐藤伸行(追手門学院大学経済学部教授)
西山隆行(成蹊大学法学部教授)
木村草太(首都大学東京都市教養学部教授)
春名幹男(国際ジャーナリスト)
石川敬史(帝京大学文学部史学科准教授)

オプエド

オプエド 真実を知るための異論・反論・逆説

著者:上杉隆+NOBORDER取材班
発行:2017年11月16日
出版社:角川書店
【出版社サイトより】インターネット報道番組「ニューズ・オプエド」は、マスメディアが恣意的に伝えない重大な事件を日々報道、ユーザー数は増え続け、現在30万人の視聴者を有する。オプエドとは「ニューヨーク・タイムズ」が導入した、同じ新聞内で社外の識者らを起用し社説とは反対の意見を掲載する手法。ゲストコメンテーターは、話題の渦中にいる政治家を始め、事件の当事者や評論化、作家、文化人、タレントらが次々登場。

特別賞(50音順)

特別賞
自衛官の心意気(桜林美佐)
失敗の法則(池田信夫)
不安な個人、立ちすくむ国家(経産省若手プロジェクト)

自衛官の心意気

自衛官の心意気

著者:桜林美佐
発行:2017年6月5日
出版社:PHP研究所
【出版社サイトより】戦後に自衛隊が発足して以来、自衛官たちは苦悩の「戦史」を背負ってきた。また現在でも、法的な制約や人員・装備の不足など課題は多い。あらゆる危機の局面で、自衛官たちは何を思い、どう動いたのか――。感動の自衛隊ノンフィクション。

失敗の法則

失敗の法則

著者:池田信夫
発行:2017年7月14日
出版社:角川書店
【出版社サイトより】本書は『失敗の本質』がパターン化できなかった「失敗の法則」について、東芝崩壊、電通事件、豊洲移転問題から原発事故まで、現代日本の「失敗」のなかで行なわれた「日本人の決め方」を緻密に分析し、それを8パターンにまとめたものである。そうした「失敗のパターン」を理解できれば、組織のなかで「失敗しないため」にはどうすればよいのか、という戦略も見えてくる。山本七平、丸山眞男などの日本人研究から最新の経済学まで膨大な知見をもとに展開される、どこにもない日本人論の誕生。

たった一言で人を動かす最高の話し方

たった一言で人を動かす最高の話し方

著者:矢野香
発行:2017年11月16日
出版社:角川書店
【出版社サイトより】あの起業家、政治家や一流企業の幹部も実践中!
NHKキャスターとして17年活躍し、現在は5歳から80歳まで31,000人の話し方を劇的に向上させた著者だけが知っている、成功を勝ち取るスゴい話し方!

東日本大震災 震災市長の手記

東日本大震災 震災市長の手記

著者:立谷秀清
発行:2017年9月1日
出版社:近代消防社
【出版社サイトより】
麻生太郎 元首相からの推薦!
震災直後に相馬市に行った。 発災以来、相馬市は立谷市長を中心に一丸となって復旧・復興に取り組んできた。 この手記は災害史上貴重な記録だ。
北川正恭 元三重県知事も絶賛!
立谷市長の強烈な使命感に職員は応えた。 城下町相馬市が大震災をいかに闘い、克服したかの記録である。 範としたい。

不安な個人、立ちすくむ国家

不安な個人、立ちすくむ国家

著者:経産省若手プロジェクト
発行:2017年11月30日
出版社:文藝春秋
【出版社サイトより】これは「経済産業省次官・若手プロジェクト」の一環として作られたもので、今後日本が立ち向かうべき課題「富の創造と分配」「セーフティネット」「国際秩序・安全保障」について議論を重ねたもの。
この資料に補足を加え、さらには養老孟司、冨山和彦、東浩紀らとの座談会、プロジェクトメンバー6人のインタビューを収録した完全版。

2017年の選考および授賞理由について

尾崎財団が主宰するリーダー育成塾「咢堂塾」によるブックオブザイヤー2017。2014年の創設から4回目となる今回の選考は、咢堂塾ならびに当財団が関心を寄せる分野を中心に行われました。

はじめに2017年という年を政治中心に振り返ると、東アジア地域の緊張拡大、そして各地で行われた県知事選に東京都議選、そしてこの秋に行われた衆議院解散総選挙が大きな出来事として挙げられるでしょう。
そしてこの数年は、既存のメディア以上に言論サイトや地上波報道に捉われないインターネット報道番組の台頭が著しく、改めてメディアのあり方が注目を集めるようになりました。
そうした経緯から本年のブックオブザイヤーは6つの分野ごとに優れた書籍に注目し、その中でも特に優れた作品に賞を贈ることと致しました。

国家の矛盾」は議員として30年以上の経験を持ち、防衛大臣や外務大臣などの要職を歴任した高村正彦・衆議院議員の政治活動の集大成ともいえる一冊です。
気鋭の国際政治学者・三浦瑠麗氏との対談形式で進められる本作は、わが国の政治システムが抱える矛盾と向き合いながらも、常に理想と現実の相克に挑んできた様子が多くの支持を集めました。今回の各部門にまたがる要素(安全保障、国政、選挙、地方自治、そしてメディア論)についても語られており、今回のブックオブザイヤー選定を総括する上でも最適であるとの評価から、唯一の総合部門授賞となりました。

日米同盟のリアリズム」「主権なき平和国家」は、国防という国家の使命に対して正面から向き合った点が塾生を中心に高く評価されました。
近年これまでにない緊張の高まりを見せる周辺事態についての現実解を求める上で、「日米同盟のリアリズム」は書名が示す日米同盟を基軸とし、「主権なき平和国家」は保守・リベラルのいずれにも与することなく、国際社会における我が国の安全保障のあり方を提示する好対照がそれぞれの授賞理由となりました。

永田町アホばか列伝」は挑発的な書名ゆえ選考段階でも大いに紛糾しましたが、その内容は著者の自戒も含めた国会議員への叱咤激励であると同時に、国会における議論の健全化を目指した姿勢が高く評価されました。選考会議と並行してSNS上で行われた公開エントリーでは、ノミネートされた各作品の中でも圧倒的な支持をいただきました。

人生100年時代の国家戦略」は、小泉進次郎議員をはじめ村井英樹議員、小林史朗議員を中心とする自民党の若手議員による政策論議と、その過程を丹念に追いかけ綴るスタンスが高く評価されました。時には閣僚級の執行部とも意見が対立することも厭わず、政策論で戦っていく様子は「次世代の胎動」を感じさせるものでした。
他党にとっても「もはや、政局や離合集散に明け暮れている場合ではない」ことを突きつける、実に痛烈な一冊です。

2017年は、近年の中でも大型の選挙が相次いだ一年でもありました。
そうした中で「黙殺 報じられない"無頼系独立候補"たちの戦い」は東京都知事選挙の候補者たちを20年に渡り追い続けた著者の執念と候補者たちへの畏敬の念、そして民主主義の成熟に対する切なる願いの結晶として、運営役員や役員を中心に高く評価されました。
64万人の魂 兵庫県知事選記」は近年各地の首長選で話題に挙がる「多選の功罪」を考える上で、また「組織力vs政策立案力」の戦いを候補者の視点で描き切った点が評価されました。観察者と候補者、立場は違えどもそれぞれの書籍は「一票の重み」を考える上で多くの示唆に富んでいます。
「うたかたの戦士たち」を破り知事の座に就いた小池百合子・東京都知事には、ぜひ彼らの想いや熱意に恥じない都政運営を行って頂きたいと思います。
そして兵庫県におかれては、せめて勝谷候補が掲げた政策案の数々と64万票という重みを受け止め、今後の県政に役立てていただけることを願ってやみません。

咢堂塾の塾生および卒塾生には地方議会の議員も数多く存在しています。
地方自治講義」は、議員報酬は果たして高いか安いかという入り口から始まり、「自治体を私たちが使えるものにする」ための具体的なアプローチが議会経験者を中心に高く評価されました。全ての自治体議員必携の一冊です。
富山市議はなぜ14人も辞めたのか」は、昨年話題になった富山市議会における一連の騒動を丹念に取材し、地方議会のあり方を正面から問い直した報道姿勢が評価されました。単なる不正あばきに留まらず、辞職を選んだ議員たちの最後の一線ともいえる「良心」を掬い上げた点は、全国規模の大手メディアに対する地域メディアの矜持を改めて示してくれるものでした。

マル激トーク・オン・ディマンドvol.11 反グローバリゼーションとポピュリズム」は、わが国におけるインターネット報道番組の草分け「ビデオニュース・ドットコム」の番組を基に再構成・書籍化されたものです。
スポンサーに依存することなく、特定のテーマを掘り下げるスタンスは既存のメディア報道に対するカウンターとして大いに注目するべきものです。今回書籍で取り上げたテーマはドナルド・トランプ米大統領の誕生前後の世界情勢ですが、視聴率至上・スポンサー至上主義の報道では成立しえないだけの掘り下げの深さを目の当たりにすることができます。
オプエド 真実を知るための異論・反論・逆説」は前者に比べると新興のインターネットメディアではありますが、一方の意見だけに拠らず、他の意見や反対意見も取り上げることで報道の中立性や公平性を目指す手法を提唱した点が評価されました。
今回のブックオブザイヤー選考において、総合部門をのぞく各部門授賞を単一としなかったのも、同書が提唱するオプエドの考え方に基づいています。


また、各部門の大賞以外でも尾崎財団、そして咢堂塾として大いに注目した書籍には特別賞を贈ることと致しました。

自衛官の心意気」は、組織としての自衛隊でなく、それぞれが血の通い、使命感に支えられている人間の集団であることを丹念に綴った点が評価されました。軍事・安全保障部門の大賞に輝いた書籍と併せて読みたい一冊です。

失敗の法則」は、歴史的名著「失敗の本質」の現代版ともいえる一冊であり、近年わが国が直面している様々な社会問題に対する分析が運営委員を中心に高く評価されました。

たった一言で人を動かす最高の話し方」が属するジャンルは政治分野と異なりますが、尾崎行雄が稀代の雄弁家として憲政史にも名を残していることを鑑みての授賞となりました。アップルの創業者でもある故スティーブ・ジョブズの歴史的スピーチや、わが国の話芸の原点とも言える徳川夢声に対する考察など、古今東西のスピーチを自在に俯瞰する視点が高く評価されました。

東日本大震災 震災市長の手記」は2011年3月11日に発生した東日本大震災に立ち向かった、福島県相馬市の奮闘の記録です。市長の視点ではありながら、市職員の懸命な取り組みが克明に記された貴重な資料としても一読をお奨めいたします。

最後の「不安な個人、立ちすくむ国家」は、国会とならぶ政策立案の源である霞が関、その中でも経済産業省の若手官僚の方々が討議を重ねた成果を書籍化したものです。いわば「将来における我が国の課題」の一覧でもあります。
同書に描かれているのはあくまでも「予測しうる課題」であり、そこに答えや処方箋はありません。それをいかに捉え、一人ひとりが傍観者でなく当事者として向き合っていくか。そうした問題提起を行った点が評価を集めました。国政部門大賞の「人生100年時代の国家戦略」と併せて読みたい一冊です。

今回のノミネート作品はいずれも力作・良作が並び、選考委員会にとっても実に悩ましいものでありました。そうした中で選び抜かれた各作品は、いずれもそれぞれの分野において一人でも多くの方に読まれて欲しい、皆様にとっても最高の「ブックオブザイヤー」になるでしょう。
ここに私たち尾崎行雄記念財団、そして咢堂塾は自信を持って、各作品を「咢堂ブックオブザイヤー2017」に選定し、皆様にお奨めいたします。
2017年を振り返り、また新たな年を迎えるにあたっての羅針盤として是非とも注目いただき、各書の魅力に触れて頂けることを願ってやみません。


以上文責・高橋大輔(尾崎行雄記念財団研究員・IT統括ディレクター)