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2024.5.3

芦田均日記「尾崎咢堂先生を訪ふ(とぶらう)」


今年は1947年(昭和22年)の日本国憲法公布から77周年の節目を迎えます。
咢堂・尾崎行雄はわが国における二つの憲法、明治憲法(大日本帝国憲法、1890.11.29~1947.5.3)と現行憲法(日本国憲法、1947.5.3~)、それぞれの施行に立ち会った唯一の国会議員でもあります。

果たして尾崎の眼には、現在の私たちが享受している憲法の公布と施行はどのように映ったでしょうか。
尾崎は自らの著書『民主政治読本』において「明治憲法と比べて、数段立派な憲法である」と評しながらも、「しかし国家は、いい憲法があれば栄えるというものではない。もしいい憲法がありさえすれば国家が栄えるものなら、滅びる国家はない」と看破しています。

さて、日本国憲法の制定前後をめぐる動きの中でも貴重な資料のひとつに『芦田均日記』があります。
その中で、新憲法の施行を間近に控えた1947年4月、憲法改正特別委員会委員長の立場にあった芦田が尾崎行雄を訪ねる場面があります。
憲法の是非や国体論に関しては人の想いもさまざまですが、あくまでも主義主張や信条を超えた「記録のひとつ」として以下に引用致します。

芦田均日記


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尾崎咢堂先生を訪ふ

五月三日の憲法施行式日の挨拶に国会側から出す人が見当たらないので尾崎咢堂を煩わす外なしと決して使者をもって依頼したが拒否された。 そこで四月二八日午前九時四十分、私は逗子風雲閣の裏門から咢堂翁を訪ねた。

応接間に通されて廊下で翁と対座した。見下した逗子海岸の風光はよろしい。然し応接間の障子は破れ、電灯のシェードも破れてゐる。禅寺の庫裡とも言ふべき有様だ。私は自分の心に贅沢心の潜むことを恥じた。

私はゴム管を通じて翁と談ったが、私のくり返しての依頼にも翁は頑として応じない。ついに令息の行輝氏が現れて、「唯今聞いていると芦田さんの話が尤もだと思います。お父さん、御受けになったら宜しいでしょう」という。

翁は「お前が出て断つて呉れると思ったら、反対のことをいふ」と抑えて、更に私に向って「この通り親と子供との意見も違う。世間はなかなか私の思う通りにならぬ」。
そう言って応諾の気色もない。そして「折角の御来訪であるから、今日一日考えて御返事することにしましょう。但し明日お答えすると言ふのは決して承諾するという意味ではありませんよ」と付け加えられた。
私はもうだめだと思つたが、これ以上仕方がないので令息に万事を依頼して其話を打ち切った。咢堂翁の談片を思浮かべるまゝに誌すと次の通りだ。

「私は日本の将来を悲観してゐる。占領軍が撤退したら内乱が続くのであろう。占領軍がいるのに政党等が争つていてどうなる」。

「憲法にしても今度の改正憲法が永く行われるとは思はぬ。だから憲法の施行が芽出たいとは感じられない。だからといつて施行式の席でそういふ話も出来ないではないか」。

「此際は挙国一致内閣を作るんだ。それ以外に手はない」。

「この話は誰にもしない話だが、実は私は陛下が憲法実施を機会に御退位になるのが本筋と考へる。この点を陛下に奏上したいと考へてゐるが、陛下は果して戦争の道義的責任を感じてゐられるであらうか。実は昨年以来内謁見を頻りにすゝめられて、仲介に立つ人もあるが、其点について確たる見通しがなければ奏上もできないし、仲介者にも此際内謁見を受諾するとは言はない所以だ」。

私は、陛下が道義的責任について充分御考へになつてゐると信じますと答へた。あゝそうですか、と翁は頗る「さもありなむ」顔付きであつた。

次に「共産党はまだまだ殖える。あれ程永い間政府にいぢめられたら、復讐心ももえるのが自然でしよう。尤も野坂君にはさような感じはないようだ」、と言はれた。

私は依頼の件は所詮駄目と感じて少々鬱陶しい気持で辞去した。半日の間雨にぬれ、坂道の危険を冒して何の得るところもなかつた。

翌二十九日、尾崎行輝氏から電話で翁が承諾されたと通知があつた。
私はホッとした。


(施行式当日の様子。天皇陛下の左側、真ん中が尾崎)
出典:新聞通信調査会 2017年写真展「憲法と生きた戦後~施行70年」

2024.4.26

尾崎行雄記念財団 共催講演会のご案内(共催:グローバル・イッシューズ総合研究所 協力:株式会社近代消防社)


テーマ「米国大統領選挙と世界の安全保障
今年は米国大統領選挙の年です。誰が大統領になるかで日本と世界の安全保障問題は大きく影響を受けるものと思われます。元自衛隊高官の軍事評論家を講師にお招きして、この問題に関して講演して頂きます。貴重な機会ですので多くの方々のご参加をお待ち申し上げております。

【講師】矢野 義昭 氏(一般財団法人日本安全保障フォーラム会長)
【略歴】
1950年大阪生。72年京都大学工学部機械工学科卒、学士入学後74年同文学部中国哲学史科卒。74年陸上自衛隊幹部候補生学校入校、第六普通科連隊連隊長兼美幌駐屯地司令、第一師団副師団長兼練馬駐屯地司令等を歴任。退官時陸上自衛隊小平学校副校長(陸将補)。
元拓殖大学客員教授、現在、岐阜女子大学特別客員教授。日本安全保障戦略研究所上席研究員、国際歴史論戦研究所上席研究員、防衛法学会理事、日本国史学会理事。拓殖大学博士(安全保障)。2023年、アパ日本再興財団主催第十六回『真の近現代史観』懸賞論文最優秀藤誠志賞。『核の脅威と無防備国家日本』『イスラム国 衝撃の近未来』『日本の領土があぶない』『軍拡中国に対処する』『核拡散時代に日本が生き延びる道』など著書多数。

【日時】2024年5月29日(水)午後6時~7時45分(受付5時30分~)
【場所】憲政記念館(代替施設)1階 会議室 (永田町1-8-1)
【参加費】 2,000円
【定 員】    40名
※建替工事のため一時的に移転している「憲政記念館・代替施設」で行います。これまでの場所のほぼ向かい側(徒歩1分)、「国会参観バス駐車場横(北)」に建てられています。会場へは1階正門からお入りください。
※地下鉄など公共の交通機関をご利用ください(丸の内線「国会議事堂前」/半蔵門線「永田町」)。

■お申込み方法
参加ご希望の方は、お名前、メールアドレス、お電話(携帯番号)を、尾崎財団アドレスinfo@ozakiyukio.jp へ5月27日(月)までにお送りください。
 apply_20240529.docx

皆様のご参加を、財団スタッフ・共催者一同お待ち申し上げます。

2024.04.01

『世界と議会』2024年春号発行のお知らせ

特集:尾崎三女・相馬雪香没後15年

 相馬雪香の歩み/相馬雪香の言葉
「記念の集い」開催報告
 講演「相馬雪香先生との思い出の数々」/土井孝子
 講演「相馬先生から引き継いだFAWAの取り組み」/大槻明子・小山志賀子

歴史資料から見た尾崎行雄

 第9回 尾崎行雄日記と「新日本」/高島笙

■連載『尾崎行雄伝』

 第22章 普選と軍縮

■INPS JAPAN

「核兵器の物語は終わっていない」/カイ・バード(『オッペンハイマー』著者)

■「咢堂ブックオブザイヤー2023」選考結果

■財団だより

2024.3.19

尾崎行雄記念財団・特別対談のご案内


テーマ「これからの日本とリーダーのあり方~尾崎行雄と笹川良一の人物像を通じて~

内外に様々な課題を抱える日本。政治も経済も閉塞感が漂うこの国に今、本当に必要なものは何か。「議会政治の父」と呼ばれる尾崎行雄と、「右翼のドン」と呼ばれる笹川良一。思想的に対立する二人だが、それぞれの信念と行動を見ていくと、意外な繋がりが浮かびあがる。二人の人物像、歩んだ歴史を振り返りながら、これからの日本、そしてリーダーのあり方を考える。

笹川能孝(ささかわ・よしたか) 一般社団法人笹川経済支援機構代表理事
1968年生まれ。昭和時代に活躍した政治・経済・芸術の怪物たちから様々な薫陶を受けた「笹川第三世代」のスポークスマンを担う。また、中小企業経営者の「対話人」として約20年にわたり、産業振興、地域振興に取り組む。

石田尊昭(いしだ・たかあき) 一般財団法人尾崎行雄記念財団理事・事務局長
尾崎行雄の三女・相馬雪香(そうま・ゆきか)とリーダー養成塾「咢堂(がくどう)塾」を発足(咢堂は尾崎行雄の雅号)。尾崎や日本政治をテーマに執筆・講演。著書に『政治家の条件』『18歳からの投票心得10カ条』『民主政治読本』『心の力』など。

【日時】2024年4月24日(水)午後6時~7時45分(受付5時30分~)
【場所】憲政記念館(代替施設)1階 会議室 (永田町1-8-1)
【参加費】 2,000円
【定 員】  先着30名
☆参加者全員に笹川能孝氏の新著『日本人最後のファンタジスタ〜非暴力&非服従の人・笹川良一物語』 を差し上げます。また、石田尊昭氏の著書『政治家の条件』を特別割引で限定販売いたします。

■お申込み方法
参加ご希望の方は、お名前、メールアドレス、お電話(携帯番号)を、尾崎財団アドレスinfo@ozakiyukio.jp へ4月20日(土)までにお送りください。
 apply_20240424.docx

皆様のご参加を、財団スタッフ・共催者一同お待ち申し上げます。

2024.3.15

憲政記念館広報紙「憲政だより 時計塔」発行のお知らせ


憲政記念館が発行しているオフィシャルペーパー「憲政だより 時計塔」。
令和6年春季・第039号が発行されました。
企画展示のお知らせや記念館の周辺情報、好評連載中のオーラルヒストリーなど、見学をより楽しめる情報が満載です。

【春季号の主な内容】
・企画展示「議会政治の軌跡-(3期)デモクラシーの行方/(4期)憲政の常道」のご案内
・もうひとつの議会史-職員オーラルヒストリーⅣ 氏原健吾さん(その1)
・衆議院憲政記念館の案内映像公開のお知らせ
・館内・庭園散歩


【URL】
憲政記念館ホームページ(http://www.shugiin.go.jp/

2024.2.19

尾崎行雄記念財団 共催講演会のご案内(共催:グローバル・イッシューズ総合研究所 協力:株式会社近代消防社)


(近影出典:https://twitter.com/yokoek


テーマ「米国大統領選挙の展望」
今年の米国大統領選挙は、どのように展開していくのでしょうか?そして選挙後の米国政治は、どうなるのでしょうか?
予備選挙の天王山スーパー・チューズデーの結果を踏まえて、アメリカ政治の専門家に解説して頂きます。貴重な機会ですので多くの方々のご参加をお待ちしております。

【講師】横江 公美(よこえ くみ)氏(東洋大学国際学部 グローバルイノベーション学科教授 博士(政策)
【略歴】
松下政経塾でアメリカ政治の研究を開始する。プリンストン大学、ジョージワシントン大学客員研究員を経てVOTEジャパン(株)取締役社長。博士号取得後、アメリカのシンクタンク、ヘリテージ財団の上級研究員を務め、現職。テレビ番組「ひるおび」「朝ズバッ!」「グッディ!」などのレギュラーコメンテータを務め、アメリカ政治解説でNHKなど出演多数。
著書に『トランプ大統領でアメリカは崩壊する』『第五の権力 アメリカのシンクタンク』『日本にオバマは誕生するか』など。

【日時】2024年3月25日(月)午後6時~7時45分(受付5時30分~)
【場所】憲政記念館(代替施設)1階 会議室 (永田町1-8-1)
【参加費】 2,000円
【定 員】    40名
※建替工事のため一時的に移転している「憲政記念館・代替施設」で行います。これまでの場所のほぼ向かい側(徒歩1分)、「国会参観バス駐車場横(北)」に建てられています。会場へは1階正門からお入りください。
※地下鉄など公共の交通機関をご利用ください(丸の内線「国会議事堂前」/半蔵門線「永田町」)。

■お申込み方法
参加ご希望の方は、お名前、メールアドレス、お電話(携帯番号)を、尾崎財団アドレスinfo@ozakiyukio.jp へ3月22日(金)までにお送りください。
 apply_20240325_01.docx

皆様のご参加を、財団スタッフ・共催者一同お待ち申し上げます。

2024.01.04

憲政記念館企画展示「議会政治の軌跡(3期)」のご案内


衆議院憲政記念館(東京都千代田区永田町1-8-1)では令和5年7月1日(土)から令和6年6月29日(土)まで、「議会政治の軌跡」と題して、帝国議会開設後から政党政治の終焉までの経過を4期に分けて、議会に関わる出来事や人物を時代の諸相などとともに展示しています。
3期展示は、1月5日(金)から3月30日(土)まで、副題を「デモクラシーの行方」とし、大正政変後から第二次山本権兵衛内閣瓦解に至る時代の動きを関係資料で紹介しています。

憲政記念館ホームーページ(https://www.shugiin.go.jp/)